銀行の融資審査1  手形の信用照会

銀行の融資審査

20年間の銀行勤務を通じて、融資審査の手法や手順について述べたい。
支店融資課の窓口には、様々な融資の申し込みがあるが、
毎月、繰り返し持ち込まれるのが、手形の割引である。

手形割引は、融資課の業務中、比較的、単調な業務であり、
経験の浅い担当者が、事務的に処理していることが多いと思うが、
奥の深い業務である。

企業が商品を売ると、その代金として手形を受け取る。
最近は、ペーパーレス化が進み、電子記録債権に代わっているケースも多いが、
いずれにしても、3~4ヶ月後などの期日にならないと、
現金化しないため、すぐに使うことができない。

資金繰りに余裕のある企業であれば、
数ヶ月後の期日まで待つこともできる。

しかし、従業員の給料や仕入先への支払いなど様々な支払があり、
期日まで待てない企業は、期日前に銀行に手形を持ち込んで、
現金化してもらう。(手形割引と言う)

企業は、期日までの日数分の利息分を銀行に払って、手形を資金化することになる。
万一、手形期日に決済されない場合は、銀行に手形を持ち込んだ企業は、
不渡りになった手形を買い戻さなければならない。

手形の信用照会

銀行の手形割引の担当者は、持ち込まれる手形が不渡りになると、
持ち込んだ企業が買い戻しできない場合は、
割引した資金を回収できなくなることがある。

従って、手形割引をするには、手形を持ち込んだ企業の信用力(買い戻し能力)と、
手形を振出した企業の信用力の両方を審査しなければならない。

手形を振出した企業の信用力は、帝国データバンクや東京商工リサーチなど、
信用調査会社の資料を活用するが、データがなければ、
手形の支払銀行の融資担当者に直接電話して、手形決済に問題ないか、
問い合わせをすることになる。

手形割引は、大手から中堅企業であると、大量に持ち込まれるため、
すべての手形の信用力を、詳細に調べる時間的な余裕はない。
割引手形に新規の販売先が含まれていると、
これまでの割引実績がないので、調べるのに時間を要する。

調査会社の「企業概要」といったデータで、評価点が50点以上(平均点以上)
ついていれば、割引するといった、ある程度、簡易的で定型的な審査対応となる。

調査会社のデータがなかったり、古いデータしかない場合は、
手形の支払銀行に、1件ずつ電話して、手形の決済ができる先かどうか、
確認する。(手形の信用照会と言う)

信用照会の電話が掛かってくるが!

規模の大きな会社であると、販売先の手形数十枚を一度に持ち込むため、
手形の信用照会は、とても面倒な仕事になる。

手形の支払銀行に電話して、
「〇〇という企業で、金額は〇〇万円です。決済に懸念ありませんか?」
すると、支払銀行の担当者から「懸念ありません」と回答が返ってくる。

手形の信用照会をしていると、逆に、自分がいる支店の取引先について、
手形の信用照会の電話が掛かってくる。

月末近くなると、何度も電話が掛かってきて、面倒なこと、この上ない。

しかも、資金繰りに窮していて、手形の決済に懸念がある取引先でも、
「懸念があります。手形が決済されるかどうかは五分五分の確率です」
などとは言えない。風評が広まって、その企業が倒産してしまうかも知れない。

よって、信用照会の電話には、「決済に懸念ありません」と、
無難な回答をしておくことになる。
しかし、この信用照会業務から、思わぬ事態に発展することがある。
(銀行の融資審査2に続く)

ai

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