銀行に勤務していた時、メーカーの審査部に転職してからも、
たくさんの決算書を分析してきた。
取引先の中小企業の決算書は、何らかの粉飾がしてあると思って、
注意したほうがよい。
オリンパスや東芝といった上場している大企業が粉飾しているのだから、
中小企業が粉飾していないはずがない。
売掛金や棚卸資産などに不良債権や不良在庫を計上するような粉飾はよくあるが、
油断していると、「まさかそこまでやるか」と言った事例もある。
他銀行の融資額、手形割引額の粉飾
「銀行の融資審査 2」の事例で述べた、取引先A社は、東京都のB社振出しの
融通手形を割引していた訳だが、私が勤務していた銀行以外に、
近隣の信用金庫とも取引をしていた。
信用金庫での手形割引残高の資料を、毎月もらっていたが、
実際の割引残高よりも少ない金額を記載していた。
信用金庫には、私が勤務していた銀行の手形割引残高を、
実際よりも少なく記載して提出していた。
本当の割引残高を申告すると、A社の売上と比較して割引残高が大きすぎるため、
銀行と信用金庫、それぞれに割引残高が違う資料を提出していた。
これは、お互いの金融機関が連絡をとって、残高を確認すれば、
すくに嘘が判明するはずだが、そこまで実行していないケースも多いと思う。
銀行の審査では、取引先から他銀行の融資額についての資料をもらって、
銀行ごとの融資シェアがどうなっているか、稟議書に添付することが多いが、
本当の融資残高や割引残高が申告されているか、注意する必要がある。
現金預金の粉飾
取引先A社の問題が落ち着いたころ、取引先のC社から、借入の申し込みがあった。
提出された残高試算表をチェックしていると、多額の現金預金が計上されている。
これほどの現金預金があるなら、これを使えばよいではないか、と思い、
過去の稟議書に添付されている残高試算表、数年分の決算書を見て、驚いた。
最近の数年間に渡って、決算書および残高試算表に、多額の現金預金が計上されている。
C社の資金繰り、当座預金の動きから言って、これほどの現金預金を保有しているはずがない。
C社の社長に、「この現金預金は何ですか?」と聞いてみると、「税理士に聞いてみないと
分からない」と言う。
顧問税理士に会社まで来てもらい、問い質すと、訳のわからないことを言っている。
この時点で、このC社との取引は終わった。
数ヶ月後に不渡りを出して倒産した。
売掛金や棚卸資産だけでなく、現金預金まで粉飾していたことを、
社長が知らなかったはずはない。
万一、知らなかったとしても、社長が決算書や試算表を見ていない会社に、
未来があるだろうか?
毎月、会社の売上や利益といった実績をチェックしていない会社は多い。
こういう会社で、業績を上げている例は、見たことが無い。
月次の業績数値を出そう
銀行では、本社に融資稟議書を提出する際や、金融庁検査、日銀検査など、
取引先の直近の業績に関する資料を、提出しなければならないことが多い。
取引先に、月次の試算表や資金繰り表の提出をお願いすると、
作成していない例は多い。
ひどい会社になると、社長が決算書の数字もみていない場合もある。
一方で、毎月の月次収支を、きちんと作成している会社もある。
社長をはじめ、会社全体で数字(実績)に対する意識が高い。
こういう会社は、業績が良い場合が多い。
少なくとも、月次の業績をきちんと把握し、次の行動に結びつけるべきだ。
そういう会社(社長)は、それだけで、銀行の支店長、担当者に尊敬され、
取引がスムーズに運ぶと思う。
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