メーカー審査部に転職して約17年が経過した。
審査部では、取引先の信用状況を分析して、取引の可否、取引する場合の限度額、
代金の回収条件などの審査を行う。
メーカーは、取引先に商品を販売して、代金を回収するまでに数ヶ月を要する。
手形による回収や、電子記録債権による回収、売掛金として翌月回収など、
様々な回収条件があるが、代金が回収できずに多額の貸し倒れが発生すると、
業績に大きな影響を及ぼす。
決算書の受領
新規に取引を開始する際や、継続して取引をしている先からは、決算書を受領して審査を行う。
この決算書を受領することが困難な場合がある。
銀行の審査では、融資を申し込んでいる立場上、
決算書を提出することは当たり前と理解されているが、
業者間の取引では、決算書を提出することが理解されていないケースがある。
業者間の取引でも、掛売りで取引するからには、金銭を貸し借りしていることに
変わりはないのであるが、取引にあたって決算書提出を拒まれることがある。
過去の経緯で、「決算書を要求されたことがない」、「他社には決算書を提出していない」
など、様々な理由で決算書の提出を拒んでくることがある。
このような場合は、取引をしなければよいのだが、営業サイドの理由で、
どうしても取引をしなければならないケースもある。
解決策の一つとして、信用調査会社に調査を依頼することがある。
帝国データバンク、東京商工リサーチなどの信用調査会社に信用調査を依頼する。
信用調査会社
信用調査会社に取引先の調査を依頼すると、2~3週間程度で、調査報告書が納品される。
信用調査会社が取引先を訪問し、経営方針、業績、経営者、販売先、仕入先など
様々な情報を収集、調査してくれる。
もちろん、貸借対照表、損益計算書も、調査してくれる。
費用は、1社あたり3万円程度である。
調査内容には、決算の状況も含まれ、信用状況を評点という点数で表してくれる。
大まかに分類すると、
60点以上 :優良
50点~59点:まずまず
45点~49点:やや不安
40点~44点:不安
~39点 :取引不可
(平均点は49点くらいらしい)
調査会社に調査依頼が入ると、調査員が調査対象にアポを取り、
訪問したうえで、経営者などに経営状態をヒアリングしたり、
財務データを分析したりして調査を行う。
この場合、調査会社は、どの会社から調査依頼があったかは、秘密にする。
調査会社に低い評価をされてしまうと、新規取引先と商売ができないなどの、
デメリットが生じる可能性があり、ほとんどの会社は調査に応じるようだが、
調査依頼を拒否する会社もあるようだ。
調査報告書をもとに、取引先の審査を実施し、社内の格付けを付与して、
掛売りしてよい限度額(与信限度)を決定するのが、主な仕事である。
与信限度
また、取引が活発になってくると、当初に決定した与信限度内に収まらないことがある。
このようなケースでは、与信限度を増額するために、直近の業績で審査する。
取引先の業績が悪化して、与信限度を減額する際は、営業サイドと連絡をとり、
適正な限度まで与信限度を減額する。
審査部が審査を甘くすると、取引先の倒産により貸し倒れが増える。
逆に、審査を厳しくしすぎると、営業機会を失い、業績が悪化する。
審査部が、いかに公正で的確な判断を下すかは、重要である。
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