メーカー審査部は、帝国データバンクや東京商工リサーチなどの信用調査会社から、
取引先の情報を入手する。
全体にザッと目をとおして、取引できる会社かどうか判断する。
様々な情報が記載されているが、やはり、決算の数字が気になる。
取引先から決算書を受領していたとしても、調査会社では、どのように評価しているか
気になる場合は、調査書を取り寄せて、最終的な与信判断をすることがある。
そのような時、稀に、驚かされる時がある。
調査書に記載されている決算と、取引先から受領した決算が違っている
信用調査会社は、調査にいくと、社長から様々なことをヒアリングしたうえで、
決算書を受領してくる。
もちろん、会社によっては、決算書の提出を拒む会社もあるが、その場合は、
調査会社の評価点が低くなるので、商売に悪影響が生じる可能性もあり、
求められると、提出する会社がほとんどを占めている。
ある取引先A社の信用調査書を見ていたら、その取引先Aから受領した決算書の数字と、
信用調査書の数字が、大きく違っていることに気が付いた。
売上高は、ほぼ同じ数字であるが、借入金の額が全く違っている。
取引先Aから受領した決算書では、借入金が少なく記載されているが、
信用調査書に記載されている借入金は多額である。
貸借対照表(バランスシート)は、貸方と借方の合計は同じ数字になるので、
借入金が大きい分、反対側の資産の部は、売掛金が大きく記載されている。
調査会社は銀行に裏を取りに行く可能性がある
調査会社は、調査した内容の裏付けをとるため、銀行にヒアリングに行くことが多い。
おそらく、取引先Aは、銀行と調査会社には、真正な決算書を提出し、
私の勤務しているメーカーには、借入金と売掛金を、両方カットした決算書を提出したに違いない。
売掛金が回収困難になり、借入金が増加してしまっている決算書を見せたくなかったのだろう。
借入金の金額や現金預金の金額は、ごまかすと、ばれる可能性があり、
もちろん、銀行にはすぐばれるので、借入金をごまかすのは、余程でないとありえない。
しかし、メーカーの審査部は、銀行を訪問することは、めったにないので、
借入金と売掛金をごまかした決算書を提出してもばれないと思ったに違いない。
取引先Aは、メーカーに決算書を提出すれば、調査会社から調査書を入手することはないと
勘違いしていたのだろうか。
後日、営業担当者と取引先A社を訪問し、実情をヒアリングし、
決算書の数字が納得できないと鎌をかけたが、
社長は、決算書をごまかしていたことは、最後まで認めなかった。
重要な取引先は、決算書を受領していても、随時、
調査会社から情報を入手するようにしたほうがよい。
違った目で、取引先を見ることができる。
コメント