2021年10月に入って、円安が進んでいる。
米国株投資をやっていると、為替相場の動きが気になってくる。
米国株投資で、個別株やETFに投資した後に、円安が進むと、
円建の資産額は上昇し、円高が進むと、資産額は目減りする。
ドル建ての資産を保有していると、円安による資産価値の目減りを低減できる。
円安の要因
現在、外国為替市場で円安・ドル高が進む要因としては、下記があがっている。
①米国におけるテーパリング(金融緩和の縮小)が近づいている。
②原油などのエネルギー高による物価の押上により、米長期金利が上昇している。
③コモディティー発のインフレ懸念が広がっても、日銀の金融政策は変わらないとの見方。
エネルギー価格の上昇が、米国のインフレ観測を強め、米金利が上昇して、
円売り・ドル買いが進んでいる。
長期的にはどうなるか?
当面は円安が進む可能性が高いように思われるが、長期的にはどうなるか?
外国為替レートの決定要因を説明する概念として、購買力平価説がある。
これは、為替レートは、自国通貨と外国通貨の購買力の比率によって
決定されるとする説である。
2国間の為替相場は、2国間の同じ商品を、同じ価格にするように動き、
均衡する。この均衡した為替相場を、購買力平価という。
よく、事例としてあがるのが、ビッグマック指数である。
ビッグマック指数
ビッグマック指数では、マクドナルドが販売しているビッグマックの価格で、
各国の購買力を比較する。
2021年時点で、
・米国ビックマックは、5.66ドル(623円前後)
・日本のビックマックは、390円(3.55ドル)
ビックマックによる購買力平価=390円÷5.66=69円
購買力平価では、1ドル=69円となる。
外国為替市場では、1ドル=110円程度であるから、円は大幅に過小評価されていることになる。
最近30年間のGDPの伸びは、米国が右肩上がりに成長しているのに対して、
日本はほぼ横ばいである。
日本も順調に経済成長していれば、ビッグマックが620円になっていてもおかしくなかった。
デフレ日本における安売り
週刊エコノミスト10月5日によると、米国と日本の価格差を解説している。
①回転ずしチェーン大手のくら寿司
くら寿司では海外店舗が好調で、2021年10月期業績予想は増収で黒字に転じている。
・日本のくら寿司では、1皿100円
・米国のくら寿司では、1皿2.6ドル~3.0ドル(300円前後)
日本人がアメリカに行ってくら寿司を食べると、1皿300円の高い寿司を食べることになる。
今、日本人はアメリカ旅行すると、物価の高さに驚くだろう。
逆に、アメリカ人が日本に来ると、アメリカで3ドルする寿司が1ドルで食べられる。
②丸亀製麺
海外227店舗、米国8店舗
・日本の丸亀製麺では、釜揚げうどん並 290円
・米国の丸亀製麺では、釜揚げうどん並 5.5ドル(605円前後)
(地元の消費者が受け入れられる価格帯を調査して価格決定している)
③ディズニーランド
・東京ディズニーランド 1デイパスポート 8,200円~8,700円
・米ロサンゼルス 1デイパスポート 114ドル~154ドル(12,540円~16,940円)
ビッグマックの価格は、先進国で日本が最も安い。
ドル換算で、ユーロ圏は5.02ドル、イギリスは4.5ドル。
韓国でも4.0ドル、日本では3.55ドル。
ちなみに、2010年の日本のビックマックは、3.91ドルで、アメリカの3.71ドルより高かった。
この10年間で、大幅に低下したことになる。
ビックマックの価格と賃金比率が、どの国でも大体同じ比率とすると、
ビッグマック指数は、為替レートの影響を取り除いて、
平均賃金の国際比較をするのに使えることになる。
実質賃金の低下
OECDによると、2020年の日本の平均賃金は38,514ドル(35か国中22位)。
韓国は、41,960ドル(35か国中19位)。
韓国経済の成長により、いつの間にか、実質賃金は抜かれている。
1990年では、日本の平均賃金は36,878ドル(35か国中12位)
韓国は、21,829ドル(35か国中21位)であった。
各国の賃金を購買力平価を用いて、ドル換算すると、
より、生活実感に近い結果となる。
この30年間、デフレが進む日本では、物価が低下し、国民の実質賃金はほとんど増えず、
日本国民は、国際的に低い給料となって、どんどん貧しくなっている。
アベノミクスの功罪
アベノミクスでは、第一の矢として、大胆な金融政策がとられ、無制限の量的緩和を実施。
金融緩和により、国内の金利が低水準におかれた。
企業業績は向上し、株価が上昇したが、2%のインフレ目標は達成されなかった。
国民の実質賃金は低下する一方で、円安で得られた利益により、株主に支払われる配当は増加した。
労働者が貧しくなり、投資家は潤った。
日本は、自動車産業などの輸出産業が、円高になると利益が出なくなるので、
アベノミクスで円安に誘導した。
安易な道をたどってしまった。
本来は、生産性の向上で利益をあげるべきだが、円安に頼ろうとした。
賃金が上がらず、円安が進んだため、日本の労働者は国際的にみて貧しくなった。
インフレの進行により金利が上昇、金融引き締め策(量的緩和の縮小)を検討する米国と、
金融引き締めに動けない日本との金利差が拡大した場合、長期的に円安が続くことになる。
これからは、資産のほとんどを円で持っているリスクに備えることが必要になってくるのではないか。
このままでは、何もしなければ、日本の労働者は貧しくなるばかり。
為替リスクを考慮しても、米国株などのドル建て資産への投資は意味があると思う。
ただし、短期的には、為替相場は様々な要因で動くので、
資産のほとんどをドル建てにしてはいけない。
特に高齢者は、蓄えたお金をつかっていく段階に入っているので、
お金を大きく使いたい時に、円高になっていると困ったことになる。
日本では、ドルのままでは使えない。円に替えなければならない。
あくまでも、資産の一部をドルで持つことで、円安に備えたい。
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